小野 博 個展 『正しさの場所』
▼オープニングレセプション
2024年8月9日(金)17:00〜18:00
■会 期
2024年8月9日(金)~ 2024年9月14日(土)
水曜日〜土曜日 13:00〜18:00 (日・月・火・祝休廊)
※夏季休廊:2024年8月14日(水)〜2024年8月17日(土)
■会 場
KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY
〒106-0031 東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布 5F
▼トークイベント
「それぞれ自分が正しいと思っている世界で、私は本当に正しいのか?」
小林美香(写真研究者/『ジェンダー目線の広告観察』著者) × 小野博(写真家)
日 時:
場 所:
登壇者:
参 加:
2024年8月9日(金)18:00〜19:30
KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY
小林美香(写真研究者/『ジェンダー目線の広告観察』著者)× 小野博(写真家)
入場無料/予約不要(先着20名程度着席)
《スリーマイル島原子力発電所》《チェルノブイリ原子力発電所》《福島第一原子力発電所》
〈正しさの場所〉 シリーズより
2020-2024 | archival pigment print | 297 × 210 mm each
©︎ Hiroshi Ono, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY
KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHYは、2024年8月9日(金)より小野博個展『正しさの場所』を開催いたします。
小野博(おの・ひろし)はアムステルダム在住の写真家。一冊目の著書『ライン・オン・ジ・アース』(エディマン刊/2007年)では世界50ヶ国を巡り、例えばアフガニスタン国境の塀を越えたときの衝撃的な風景や(国境を少しでも開けてしまうと移民希望者が雪崩れ込んでしまうため、ビザを保有していても塀を登るように指示された)、内戦中のベオグラードのレストランの様子(ハイパーインフレのため30分毎に価格が書きかえられ、オーダー時に払わない場合は食後にいくらになっているか分からない)、ルワンダ大虐殺の現場で生存者と談笑する様子など(たくさんの白骨の前で「足が速かったから生き延びられた」と笑いながら生存者に語られた)、切れ切れに寸断された世界の地表を〈地球の線〉として一本の線で繋ぎ、世界中のディストピアと言われる国の暮らしを写真と言葉で綴りました。
二冊目に上梓した『世界は小さな祝祭であふれている』(モ・クシュラ刊/2012年)では、オランダと日本の風景を同じ希望の地平で映し出しながら、東京特有の息苦しさに煩悶する日々のエッセイと、国籍問わず多様な背景を持つ人々を許容するアムステルダムをユーモラスな眼差しで綴り、オランダと日本の文化的な差異のみならず、人間に通底する大切なものを浮かび上がらせました。
本展にて発表する新作〈正しさの場所〉では、小野が約5年間かけて撮影した世界中の景色を、静謐な目線で俯瞰します。世界中で正義がふりかざされ、重層的な分断が深刻化し、過去の絶望の記憶も忘れられ、衝突や息苦しさが加速度をあげて駆け巡っているかのような「今」を、独自のまっすぐな目線でフラットに世界を並列させます。
混迷を深める今だからこそ、人間が種の生存のために編み出された概念とも言われる「正しさ」を今一度みつめなおす本展を、是非お見逃しなくご高覧いただけますと幸甚です。
《ニーストラックテロ事件》《ワールド・トレード・センター・トランスポーテーション・ハブ》 《ブリュッセル連続テロ事件》《ニューヨークマンハッタン上空》《チュニジア・スース銃乱射事件》from the series “The Righteous Place” | 2020-2024 | archival pigment print | 297 × 210 mm each | ©︎ Hiroshi Ono, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY | 《津久井やまゆり園》《国立療養所 長島愛生園》《アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所》from the series “The Righteous Place” | 2020-2024 | archival pigment print | 297 × 210 mm each | ©︎ Hiroshi Ono, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY | 《渋谷》《東京・総合病院前》from the series “The Righteous Place” | 2020-2024 | archival pigment print | 297 × 210 mm each | ©︎ Hiroshi Ono, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY |
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《あさま山荘事》《スターリン》from the series “The Righteous Place” | 2020-2024 | archival pigment print | 297 × 210 mm each | ©︎ Hiroshi Ono, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY | 《キプロス緩衝地帯(ギリシャ側)》《メリリャ・スペイン・モロッコ国境塀》《キプロス緩衝地帯(トルコ側)》from the series “The Righteous Place” | 2020-2024 | archival pigment print | 297 × 210 mm each | ©︎ Hiroshi Ono, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY | 《安倍晋三銃撃事件現場》《新国立競技場、皇居》from the series “The Righteous Place” | 2020-2024 | archival pigment print | 297 × 210 mm each | ©︎ Hiroshi Ono, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY |
《横浜米軍機墜落事故》《横田基地》《ハーディー・バラックス》from the series “The Righteous Place” | 2020-2024 | archival pigment print | 297 × 210 mm each | ©︎ Hiroshi Ono, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY | 《ヒトラー総統官邸跡》《ムッソリーニ銃殺現場》《ヒトラー総統地下壕跡》from the series “The Righteous Place” | 2020-2024 | archival pigment print | 297 × 210 mm each | ©︎ Hiroshi Ono, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY |
アーティストステートメント
個展「正しさの場所」の主題は「正しさとは何か」です。
SNS上では個人や団体に対して攻撃的な投稿がされることが常態化しています。その投稿の根拠になっているのは、投稿者が信じている「正しさ」です。また、世界中で起こるテロも、彼らの宗教解釈や世界観では極めて「正しい」行動とされています。そして、ドナルド・トランプの登場によって、アメリカ国民は保守と自由主義者に二局分断され、それぞれが自分の「正しさ」に疑いを持たず、両者の合意がほとんどない社会が生まれました。さらに、原子力発電所は社会や産業の基盤として「正しい」とされながら、福島第一原子力発電所は制御不能になり人々の生活を一変させました。
この個展では、「正しさ」に関わる場所の写真と、その背景を記述した文を並べて展示します。それは文章中の情報がなければ写真に隠された「正しさ」の記憶を呼び覚ますことが出来ないからです。写真と文章を行き来きしながら「正しさとは何か」について考え、そして「正しさ」の向こう側にある「最大多数の最大幸福」を想像するきっかけとなればと願っています。
小野 博
アーティストプロフィール
小野博(おの・ひろし)
写真家。1971年岡山県生まれ、2002年よりオランダ・アムステルダム在住。
多摩美術大学彫刻科卒業。サンドベルグ・インスティテュート・ファインアート科修士課程修了。
コニカ奨励賞を受賞し世界各地を周り、2002年〜2006年はポーラ美術振興財団在外派遣員及び文化庁芸術家在外研修員としてオランダにて研修。主な個展に『日本の本日』(2017年、SUNDAY 、東京)、『Waterland Het heldere landschap』(2010年、superstore Inc. viewing room、東京)、『大切なことは小さな声で語られる』(2008年、大原美術館、岡山)、『Line on the Earth』(2001年、奈義町現代美術館、岡山)など。主なグループ展に『大原現代 OHARA CONTEMPORARY』(2013年、大原美術館、岡山)、『岡山・美の回廊』(2010年、岡山県立美術館、岡山)、『VOCAに映し出された現在・いまいるところ / いまあるわたし』(2007年、宇都宮美術館、栃木)『風景 Sight-Cruising』(2005年、丸亀猪熊弦一郎現代美術館、香川)、『旅「ここではないどこか」を生きるための10のレッスン』(2003年、東京国立近代美術館、東京)など。パブリックコレクションに大原美術館、清里フォトアートミュージアム、東京都写真美術館。