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ミナミ・ノリタカ個展

『California City, California』

 

 

▼オープニング・レセプション

2018年4月7日(土)18:00—20:00

*どなたさまもご自由にお立ち寄りください

■会 場  

KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY

〒106-0031 東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布 5F

TEL 03-5843-9128

 

■会 期               

2018年 04月 07日(土)~  2018年06月 02日(土)

火〜金 13:00-20:00|土 12:00〜19:00

日・月・祝休廊 * 5/1, 5/2, 5/15〜5/23は臨時休廊

 

 

 

▼アーティストトーク

「未来と過去を行き交う建築と写真」

4月7日(土)17:00—18:00

池谷修一氏(アサヒカメラ編集者)× 菅原大輔氏(建築家/SUGAWARADAISUKE代表)× ミナミ・ノリタカ(アーティスト)

*予約不要 |入場無料 | 先着20名まで着席にてご案内

 

Tract No. 3198, Tract No. 3282, Correctional Facility (California City, California)

2016-2017 | Pezography print | 500×760mm

© Noritaka Minami, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHYは、2018年4月7日(土曜日)より、西麻布に移転オープンする新スペースのこけら落とし展として、ミナミ・ノリタカ個展『California City, California』を開催いたします。

 

 

2015年にドイツ・ケーラー社より初の作品集として発表し、現在も撮影が続けられている作品《1972—Nakagin Capsule Tower》では、黒川紀章によるメタボリズム運動の象徴的建築「中銀カプセルタワービル」の外観やカプセル内部を淡々と撮影しつづけ、かつての未来像が古びゆくなかで、独特な時間軸として在り続ける姿をあらわにしたミナミ・ノリタカ。4年振りの新作となる本展覧会では、1950年代にカリフォルニアの砂漠に建設が試みられた夢想巨大都市「カリフォルニア・シティー」の今の姿を空撮で撮りためた、渾身の新作群を発表いたします。

 

*       *      *

 

ミナミが本作のモチーフとした「カリフォルニア・シティー」は、1958年、戦後の急激な経済発展の只中に、広大なモハーベ砂漠に「ロサンゼルスに次ぐ巨大都市を」と、元社会学者の不動産デベロッパー、ネーザン・メンデルゾーンによりつくられた街です。

 

戦後つくられた郊外ニュータウンの多くは、1950年代から1960年代の急進的に加速し続ける戦後経済成長期に、より大きな利益をより早く得ようとするデベロッパー達が、広い土地をがむしゃらに買いあさり、そこに街をつくることを宣言しては、マイホーム購入を夢みる若いファミリー層に「パラダイス」として続々と販売することで形成されていきました。

 

「広大な砂漠に巨大都市をつくる」というメンデルゾーンの妄想もまた、実態なきシャボン玉のごとく膨らみつづけ、「水に満ちた理想的な街を」と都市設計だけが着々と進み、結果として、1960年には初の警察署が設置され、郵便番号も採番され、1965年には「街」として制定されます。人口1000人未満のまま、面積としてはカリフォルニア州で三番目に大きな都市として登録されたカリフォルニア・シティーは、半世紀も前からきっかりと区分けされ、地図上では未舗装の通りのそれぞれにも固有の名前がつけられ記載されています。

 

しかしミナミがフイルムカメラを用い空撮を行ったモノクロ写真では、広大な土地を見渡しても何も建造物はみえません。家が見あたらないばかりか、電気供給を示す電線もなく、ぽつんと大きな施設があったかと思えばそれは刑務所であり、シミュレーションゲームの序盤に時が止まってしまったかのようです。秋のサンクスギビング期には、成人式に集団暴走する日本の若者たちかのように、こぞって砂漠を駆け巡るオフロード好きのアメリカ人たちが見受けられたりもしますが、彼らも砂埃に舞うその地がかつて「水に満ちた大都市」を謳い開発されていたとは知らないことでしょう。半世紀前に思い描かれた理想的な夢の姿からはかけ離れたその地を、ミナミは淡々とフイルムに焼き付けていきます。

 

*       *       *

 

「経済は成長しつづけるもの、消費は増え続けるもの」。あるいは、「貨幣にこそ価値がある」という概念。いま私たちは、これまで共通前提認識とされてきた概念が揺らぎはじめる時代を生きています。農耕社会から貨幣経済へと移行し、大量生産・大量消費経済社会を経て、いよいよ飽和状態を迎えつつある人類は、モノが溢れかえった果てに仮想世界に価値を見出しはじめています。価値はどこにあり、夢はどこにあるのか。時間はそこにどのように作用しうるのか。かつての「未来の夢」が半世紀を経た今の現実世界にみせる姿は、鑑賞者に多くのことを語りかけるでしょう。

 

Wonderland (#65-15), Wonderland (#29-08)

2017 | Pezography print | 250×340mm

© Noritaka Minami, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

「California City, California」に寄せて

本作《California City, California》は、社会学者からのちに不動産デベロッパーへと転身したネーザン・メンデルゾーンが1958年に発表した、モハーベ砂漠をカリフォルニア・シティーという巨大都市へと転換する構想を追ったものです。カリフォルニア・シティーは、第二次世界大戦に急激に増加する人口と経済発展の受け皿となるべく、カリフォルニア州の新たな大都市を目指し計画されました。たとえ過酷な砂漠の真ん中であっても、豊かな近代的生活を送るために必要不可欠なものを構築しうる自由さとパワーを、人類は持しているのだという信念に基づいた計画でもありました。メンデルゾーンと共同経営者たちは、30万平方メートルにも及ぶ土地を丁寧にデザインし、占有面積でいえば州で三番目となる大都市を実現させるべく都市設計を実行しました。初期段階の広報素材には「水」モチーフが繰り返し使用され、将来的には水に満ちた理想的な都市が実現することが大々的に謳われました。現在のカリフォルニア・シティーは、当初思い描かれデベロッパーが広く大衆へと訴求した理想的な姿からは、程遠い様相を呈しています。広大な土地に縦横無尽なネットワークのように張り巡らされた道路の合間にありながらも、今尚ほぼ無人であり続けるカリフォルニア・シティー。空撮で記録されたそれらの写真は、広大な砂漠に理想都市を築き上げるというメンデルゾーンのビジョンが、環境に対し持続可能なモデルとしてあり得たのかを問いかけます。街を形成するための基盤を備えたこの場所に、将来的に街形成が実現される兆しが見出されることは、果たしてこの先あるのでしょうか。

 

 

ミナミ・ノリタカ


 

アーティスト・プロフィール

ミナミ・ノリタカは1981年大阪生まれ、シカゴ在住。カリフォルニア大学バークレー校卒業、カリフォルニア大学院アーバイン校・修士課程修了、現シカゴ・ロヨラ大学准教授。ハーバード大学、ウェルズリー大学、ボストン美術学院、カリフォルニア大学バークレー校、カリフォルニア大学アーバイン校などでも非常勤講師として写真学を担当した。グラハム財団、ポロック・クラズナー財団、ダフィー財団から助成金を得て積極的に作品制作を続ける。主な個展にグリフィン写真美術館(アメリカ・マサチューセッツ)、UCLA建築都市デザインギャラリー(アメリカ・カリフォルニア)等。主なグループ展にアパチャー(アメリカ・ニューヨーク)、フォトバーゼル(スイス・バーゼル)、ニューワイトギャラリー(アメリカ・ロサンゼルス)等。写真集『1972: Nakagin Capsule Tower』をKEHRER(ケーラー)社より2015年に刊行。サンフランシスコ近代美術館、カリフォルニア大学ロサンゼルス校建築・都市デザイン学科、シカゴ現代写真美術館などに作品収蔵されている。

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